報連相は、会社のコミュニケーションの基本です。しかし、報連相ができない・苦手だとの意識がある若手社員も多く、また管理職が教え、定着させるのに苦労することの一つです。そこで報連相をおさらいし、上司・部下それぞれに何をしたら報連相はできるようになるのか、解説します。
そもそも報連相とは
報連相とは、報告・連絡・相談のビジネス上のコミュニケーションの基本要素のことです。報連相の語呂合わせですが、1982年に山種証券の社長である山崎富治が提唱し、社内に広めたのが始まりです。さらに、「ほうれんそうが会社を強くする」という著書として世に出てベストセラーになりました。
報告・連絡・相談として何をするのか、また、会社で期待されている、報告・連絡・相談とは何か、以下でもう少し詳しく紹介します。
報連相で何をするのか。
報告
報告は上司に対して、上司が必要な情報を伝達することです。上司は数人から何十人もの部下を管理し、タスクの進捗状況を把握し、監督責任を果たします。上司にも一日は24時間しかありませんし、すべてのタスクを直接見ることはできません。そこで、上司は部下の報告から情報を吸い上げて、会社全体の管理コストを下げるのです。
さらに言うと、不祥事・事故などの上司にとって都合の悪いことは、対策を早く立てなければならないため、早く報告することが必要です。
連絡
連絡はあるタスク・プロジェクトの関係者に必要な事項を共有することです。例えば会議日時・準備の仕方・仕事の手順など、関係者にもれなく同じことを伝えるのがポイントとなります。伝えなければ、他の人の仕事の進行に支障をきたす場合は連絡すべき事項になります。
例えば、「~さんはこの会議に出ないと困る人だ」「研修準備担当に当日の進行表を連絡しよう」これらの連絡がなければ、会議に出られない、研修室レイアウトもアサインも決めにくいなど、こうしたケースの連絡不足には職務を停滞させる弊害がありそうです。
相談
相談は上司に行うのが基本で、自分の職務管掌内の事項について判断に迷ったときに行うのがビジネス上の相談です。同僚に相談するのは、ビジネス上の相談としてはあまり合理的ではありません。判断を同じくらいのスキルである同僚にしても判断に迷う同じ結果が出そうだからです。
ただし、ほかのプロジェクトで同僚でも経験値の高い人に相談する、などと根拠がある場合は、同僚への相談もビジネス上の相談として合理的なものといえるでしょう。
部下が上司に報連相できなくなる原因
報連相は、コミュニケーションの基本といわれ、新人研修でも真っ先に習う内容の一つです。しかし、もしも報連相がうまくいかないとどうなるか考えてみると、上に見たように、ビジネスを停滞させ、都合の悪いことは上司には知らされず、リスクマネジメントもできなくなってしまいます。
報連相は、このように、会社のリスク管理のカギになる重要なものと考えるべきですが、会社のコミュニケーション上の代表的な課題でもあります。では、なぜ、報連相ができなくなってしまうのでしょう。
何をどのタイミングで伝えれば良いかわからない
若手ビジネスマンの多くが、このタイミングの問題で悩んでいるようです。どのタイミングで報告をすればよいのか、計りかねている、ということです。
タイミングが取れない、という問題点には2つのさらに違う問題点があるようです。
報連相をする上司に気を遣ってしまう
「報告をしようとすると、返事もなく怖い」
「報告しても目も合わせない」
「忙しそうで叱られそうだ」
こういうことから報連相がおっくうになり、最後には知らなかったでは済まされない問題を上司が知らない、という結果になりかねません。
この問題は部下、上司双方から歩み寄ったほうがよいでしょう。
部下側からは、もう少し気を遣わない方法を工夫してみてはどうでしょうか。例えば、「このタスクの進捗状況は、週2回火曜と木曜にメールでお伝えします」と最初から宣言するやり方はプロジェクトの報告の場合賢いと思います。
口頭でどうしても話したいときは、予定をカレンダーに入れてもらう、あるいは、他の報告者の後についていって、2分だけ時間をくれといってみる、といった調子です。
上司側も、もう少し話を聞く時間をとる必要があるかもしれません。部下の報告会に決まった曜日に15分だけ時間をとり、案件の進捗を報告させる、あるいは報告はこういう決まったメールのテンプレートを使ってほしい、などとして交通整理をするなど、気を遣う部下の気持ちに寄り添う対応をしてよいと思います。
気を遣う、ということは、上司側が思う以上に、上司は怖い・とても話かけられる雰囲気ではない、と部下が思っていることを示唆しています。上司側に報連相をさせる雰囲気づくりをする責任はあります。この意味で、目も合わさない、返事もしない、などというのは、かなり問題があります。
報連相に対する意識が低い
報連相に対する意識が低い、という場合も報連相ができない原因となります。都合が悪いことが起こっていても「これくらいはいいか、報告しなくても」「あれも大丈夫だったからこれも大丈夫、相談しなくても自分で判断できる」ということを漫然と積み重ねた会社に不祥事が起こりやすくなることをご存じの方も多いと思います。社内でも高い意識が共有できているか問題となります。
また、早く報告することにより、適切な対処ができた成功事例の共有もできているでしょうか。「ライバル社の動向に素早く反応し、営業戦略を変更、案件の追加受注につなげた」といった成功事例は世の中に多くありますが、1営業社員の報告、関係者への連絡からそれは始まっていると考えると、報連相のビジネスでの重要性をより理解することができるでしょう。
こんな重要な報連相がよくわからない、できないという問題は、部下だけの問題ではありません。上司も報告が少ない、相談にも来ない、という状況に危機感を持つ必要があります。上司の意識が低いと、部下も意識が低くなってしまいます。「部下の報連相ができてない」とぼやく上司こそ問題だ、ととらえなおす必要があります。
自分ひとりで解決できると思っている
報連相に限らず、ビジネス上のコミュニケーションは、「仕事をするのは一人でできるものではない」という事実が前提にあります。
しかし、一人で解決できることは報告も連絡もしなくてよい、としてしまう会社員も意外と多くいるものです。こう思いこんでしまうと、ほかの人とのかかわりを想像することができなくなってしまうので、結局必要な人に情報が行きわたらなくなってしまいます。
特に、主任・係長クラスになって、仕事が以前よりより理解できている、と思っている中堅がなぜか報連相をしない場合、よく考えられる原因は「そこでは自分で解決できるので別に報連相などしなくてよいと思っていた」ということです。
主任・係長クラスは、課長クラスよりは力が足りず、まだビジネスコミュニケーションに修業がいること、また、それでも全く恥ずかしくないことを伝える必要があります。傲慢だとたしなめたりするのは、逆効果で、一人に閉じこもりがちな傾向を強化してしまいます。
勤続X年研修など、節目研修を行っている会社などでしたら、キャリアの全体像をグループワークなどで見直す機会があるでしょう。そういう場所でも、職位にかかわらず、コミュニケーションも含め、各人のスキル向上のために援助的なかかわりを会社がする、というメッセージを発信することもよいと思います。
報連相ができない・苦手な人の特徴
報連相ができない、苦手な人には共通する性格や特徴も見られるようです。